実写映画監督とアニメーション作家、二人の共同監督

山下敦弘さんが撮影した実写映像(上)と、久野遥子さんによってアニメーション化された映像(下)
©いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会

撮影とアニメーションで分担はしましたが、撮影の現場には久野さんも立ち合いましたね。
天気や時間帯を気にせず撮影ができるので助かりました。撮影後にアニメーションでもう一度演出しなおせるのはロトスコープならではだと思います。僕は普段の映画づくりでもあまり絵コンテを切らないので、今回も同じように、まず芝居を撮影して、編集の段階で、アニメーションになることを想定しながらカット割などを久野さんと一緒に考えました。そこから一旦久野さんにバトンタッチという流れでしたね。実写をもとにしないシーンは、カット割も含めて久野さんに考えてもらっています。
編集や音入れのタイミングなど、ある程度場面がつながって見える状態になったところでまた山下さんにも見てもらって、お互いの意見をすり合わせました。

アニメーションでも、役者の演技が自然に見えるか

かりん
©いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会
ヒロインのかりんちゃんは、原作には登場しない映画オリジナルのキャラクターなのですが、主要なキャラクターのなかでは一番普通の人間らしい、実写の役者に一番近い存在です。アニメーションになったときの彼女の仕草や表情が、実写撮影で狙った自然な芝居のように見えるかどうかは、一番こだわったところかもしれません。とはいえ出てきたものがよかったので、さほど意見をいう必要もなかったのですが。

久野遥子さん
「Airy Me」からつながったフランス・MIYUとの協働
久野さんが卒業制作として制作し、その後数々の賞を受賞した作品「Airy Me」
©2013 Kuno Yoko All Rights Reserved.
アニメーション:久野遥子|音楽:「Airy Me」Cuushe
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ロトスコープで制作された長編アニメーション映画。第24回文化庁メディア芸術祭(2021)エンターテインメント部門大賞受賞作。制作期間中、2015年度には文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業の採択を受けている。