フランスのアニメスタッフはアーティスト気質
「地獄にいるお母さんは罪人なのか」
山下敦弘(以下、山下)
国や宗教によって受け取り方が違うのも興味深かったですね。特に違ったのは地獄の解釈です。フランスの解釈は日本よりもすごく重い。「地獄にいるということは、お母さんは罪人なのか」と。
かりんの亡くなった母親、柚季
©いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会
それは私も何度も聞かれました。この作品をつくるにあたって調べたのですが、日本の近世的な女性観が影響された仏教では、女性は血を流すからだとか、子どもを産まないと落ちるだとか……、女性が地獄に行かないルートはほとんどないのだそうです。ただ私としてはその宗教観を強調したいのではなく、かりんちゃんから見れば理想のお母さんでも、一人の人間がいろいろな面を持っているのは当然のこと。その広がりという意味では、お母さんが地獄にいてもいいのではないかと思いました。それは制作段階からMIYUにも伝えていたことです。
MIYUのプロデューサー二人に脚本もしっかり見てもらっていたのですが、実は脚本の段階でNGが出た部分もありました。当初はかりんちゃんが、お母さんの骨壷を探すストーリーを考えていたのです。「骨を見つけて持って帰りたい」と。でも「それは怖すぎる」と言われて、実現できませんでしたね。
久野遥子さん
8年の制作期間中に積んだ経験と進化
久野さんと山下さんがあんずちゃん準備期間中に初めてタッグを組んで制作した『東アジア文化都市2019豊島PR映像』
山下敦弘さん
アニメーション制作に挑戦するクリエイターへのアドバイス
人に見せるという点では、コンテストなどに出してみるのはとてもいいと思います。賞をねらって作品をつくるわけではないけれど、出してみることで、自分では気づいていなかったような、作品のいいところやすごいところを見つけてもらえる。学生の頃はとくに、まだ自分では気づいていない部分が多いので、自分を知るきっかけになると思います。
©いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会