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2025/9/24(水)-9/28(日)

オタワ国際アニメーションフェスティバル2025 レポート

CG-ARTSでは、「New Way, New World: Connecting Japanese Animators to the World」(通称:NeW NeW)という短編アニメーション分野のクリエイター等育成支援プログラムを、「クリエイター支援基金(Japan Creator Support Fund)」の一環として、文化庁と日本芸術文化振興会とともに主催しています。本プログラムは、海外進出に強い意欲を持ち、将来海外での活躍が期待される国内の短編アニメーション作家を対象に、育成から海外展開までを一体的に支援するものです。

このNeW NeWの一環として、2025年9月24日(水)〜9月28日(日)に開催されたオタワ国際アニメーションフェスティバルへ支援作家の派遣を行いました。NeW NeWプログラムのサポートとして初めてアニメーション映画際に同行したCG-ARTSスタッフによる、映画祭のレポートをお届けします。

オタワ国際アニメーションフェスティバル

オタワ国際アニメーションフェスティバルはその名の通り、カナダの首都、オタワにて毎年9月に開催される北米最大のアニメーションフェスティバルです。アヌシー、ザグレブと並ぶ世界三大アニメーションフェスティバルとしても知られており、国内外から集められた多くの作品や上映プログラムが、市内の映画館やアート関連施設で5日間をかけて上映されました。上映プログラムは短編コンペティション、長編コンペティションから、特集上映の「Raw Outrage – The Films of Phil Mulloy」、「Georgia on My Mind − ジョージアのアニメーション 95周年」、「Universe Room – A Tribute to Clyde Henry」、カナダの学生作品特集等までさまざまで、数多くの個性豊かなアニメーション作品と出会うことができます。 短編コンペティションと関連した試みとしては、短編コンペティションで選ばれた作家が登壇する「Meet the Filmmakers」というプログラムがあります。映画祭のアーティスティック・ディレクターのクリス・ロビンソン氏と短いトークを行い、観客からのQ&Aにも答えていくというもので、温かい雰囲気のなかで行われる作家と観客のやりとりや、作家それぞれの個性が垣間見える印象的なプログラムでした。 また上映プログラムと同時に、配給やマーケティングに携わる人々とのネットワーキングや情報交換、今日のアニメーション業界を理解するのに役立つ様々な講演が開催されるTAC(The Animation Conference)というプログラムも開催されていました。上映だけでなく、こうした育成やビジネスに特化したプログラムが実施されることは、業界を活性化させていく上で非常に重要な役割であると感じます。

ByTowne Cinemaというレトロな映画館。ここを起点とした複数の会場でさまざまな上映が催される。開会式もこの会場で開催された。

ロビンソン氏による開会式での挨拶。ミニコントのような一コマもあり、映画祭のカジュアルな雰囲気を象徴しているようだった。

Arts Court: Theatreで行われたMeet the Filmmakersの様子。実際の制作方法やコンセプトについてなど、作家本人から色々な話を聞ける貴重なチャンス。客席はほぼ満席で、みなさん熱心に質問していた。
映画祭のガイドと、受付時にもらえるトートバッグ。映画祭期間中、オタワの街にはこのトートバッグを持った人がたくさん歩いていて、映画祭の一体感を担うアイテムとなっていた。

多数の交流の機会

映画祭3日目にはThe Animators’ Picnicという大規模な交流イベントが開催されました。映画館などのある市街地からシャトルバスに10分ほど乗り、Strathcona Parkという大きな公園へと移動します。会場には巨大なパラソルが設置されていて、参加者は提供されるサンドイッチや飲みものを片手に、思い思いに交流を図ります。アニメーション作家以外にも、映像関連会社の方やプロデューサー、アニメファンの方、美術学生など、さまざまな立場からアニメーションに関わる人々が集い、にぎわいを見せていました。
このAnimators’ Picnicの他にも、1日目夜に行われたOpening Night Partyや3日目夜のFriday Night Party、最終日のClosing Night Partyなど多くの交流機会が設けられており、世界中から集まった人々とアニメーションを通じてネットワーキングができることは、映画祭の醍醐味であると実感しました。

The Animators’ Picnicの様子。

ピクニックではカボチャのカービングコンテストが同時開催されていて、参加者は思い思いのカボチャを制作。そしてロビンソン氏の要望により、コンテストの審査員をNew NeW支援作家の6名が行うことに!

New Newでの上映と、トークイベントの開催

映画祭2日目と3日目にはOttawa Art GalleryのAlma Duncan Salonという会場にて、New Way, New Worldの上映会を開催。とくに3日目の上映では200名を超える方に来場いただき、大盛況となりました。
また、これはオタワでの上映全てに共通することですが、上映作品に対して観客が示す反応が大きく、会場の空気が生き生きとしていたことが強く印象に残っています。ユーモラスな場面では「大爆笑」と言えるほどよく笑い、悲しいシーンでは「oh…」という悲しげな素直な反応があり、日本での上映と大きな違いを感じます。こうした反応をもらえることは作家の皆さんにとって大きなモチベーションになるようで、大変有意義な上映会となりました。

最終日となる28日には、「The Secret of Japanese Indies」と題し、NeW NeWのトークイベントをArts Court: Theatreにて行いました。ロビンソン氏を司会に迎え、NeW NeWの支援作家6名それぞれのプレゼンテーションと、現在制作中の新作についても語られました。
上映会、そしてトークイベントの終了後には、観客たちがNeW NeWのメンバーへ積極的に声をかける姿が見られました。「あのシーンのここが印象的だった」、「どうやってストーリーを構想しているのか」など作品への感想や質問が述べられ、活発な交流の時間が生まれていました。作品について直接言葉を交わすことは、作家と観客双方にとって、作品への理解が深まる意義深い時間になったのではないでしょうか。

NeW NeWプログラムの上映前挨拶の様子。観客の大きな拍手で迎えられた。

Arts Court: Theatreでのトークイベントの様子。

おわりに

はじめてこの映画祭に参加して強く感じたことは、作家はもちろんのこと、全ての参加者を歓迎してくれるような温かいムードに包まれていたということです。会場には、全ての作家と、作品を、祝福してくれるような空気があり、それはこのような場で作品を発表できる作家たちを羨ましくも思ってしまうほど、感動的な体験となりました。
世界各国から集まった作家や観客との出会いを通じ、アニメーションが国や言葉を越えて人々を結びつけることを実感したとともに、アニメーション文化の発展や新たな才能の発掘、そして作品と人をつなぐ国際的なハブとしての映画祭の重要性を、改めて実感することのできた5日間でした。

授賞式の一コマ。折笠良氏の『落書』がナラティブ短編部門にて最優秀賞を受賞!

近隣の公園にいたカナダグースたち。オタワは美しい街並みと豊かな自然が魅力的な街でした。

公開日:2025年11月14日

取材・文・写真:平山(CG-ARTS 文化事業部)

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