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「DEMO 2025」リサーチレポート──アートの実験空間から

CG-ARTSでは、「WAN: Art & Tech Creators Global Network」というメディアアート分野のクリエイター育成プログラムを、文化庁と日本芸術文化振興会が設置した「JAPAN CREATOR SUPPORT FUND」の一環として実施しています。本プログラムでは、グローバルに活躍できる日本人メディアアートクリエイターを戦略的に支援し、国際的なプレゼンスを強化することを目的としています。

2025年6月初旬、私たちWAN事務局はリサーチとネットワーキングを目的として、当プロジェクトで連携予定のNEW INCが主催するメディアアートの展覧会「DEMO2025」に参加しました。

NEW INC とは、NEW MUSEUMの付属機関として2014年に設立された、世界初の美術館発インキュベーションプログラムです。アーティスト、デザイナー、技術者などを対象に、実験的かつ社会接続型の創作活動を支援しています。

プログラム構成

「DEMO2025」は、ニューヨークのロウワーマンハッタン周辺にあるビル、WSAで開催されました。  

この展示は、以下の5つのトラック(区分)で構成されています。  

  • ART & CODE
  • COOPERATIVE STUDIES
  • CREATIVE SCIENCE
  • EXTENDED REALITIES
  • SOCIAL ARCHITECTURE


AR、インタラクティブ映像、音響インスタレーションなど、多彩なスタイルで作品が展示されており、それら一連の作品群を“Showcase(展示品)”と呼ぶのも、DEMO FESTIVALならではの表現。プロトタイプのような試みから完成度の高い作品まで、アートを通じてテクノロジーを俯瞰する展覧会でした。

展示空間

テクノロジーアートにおいて、「相互性」は非常に重要なテーマです。インターフェイスという概念がコンピュータ技術の発展に欠かせなかったように、技術と文化もまた、相互に影響を及ぼしながら成長を続けています。  

DEMO2025では、こうした相対的な進歩が展示空間そのものにも反映されていました。前述のとおり、本展は作品展示、体験、トークイベントがすべて同時進行で行われており、トラックごとに明確なパーティションを設けず、緩やかに空間を5つのトラックに分割しています。

その様はまるで、空間そのものがインタラクティブな芸術環境として機能しているようでした。それにより、社会への問題提起も全体へと共有されます。この場所性は、創造と社会をつなぐ可能性を秘めており、まさに新しいアートのあり方を提示しているかのようです。

WANとの関連性

今日において人種やエスニシティ、ジェンダーといったテーマは欠かすことのできない要素のひとつです。

この展覧会を主催するNEW INCは、扱うジャンルの幅広さだけでなく、多様な出自のクリエイターを受け入れるプログラム設計に特徴があります。DEMO2025においても、その思想はいかんなく発揮されており、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちが展示・発表をおこなっていました。 

また、会期中に実施されたプレゼンテーションも非常に魅力的でした。発表者はスライドを用いながら自身の作品について語り、それが持つ技術的可能性や文化的意味を観客と共有していきます。そして、自身が次に目指したい構想を提示し、スポンサーやパートナーを募ることで、新たなプロジェクトにつなげようとするネットワーキングの場にもなっています。

こうした開かれた場の設計は、私たちWANが掲げる「メディアアートの国際的ネットワーク形成」と非常に親和性が高く、NEW INCのプログラムと採択作家の有機的な連動が実現に向けて確かな手応えを感じることができました。

おわりに

DEMO2025は、作品そのものというよりも、それを取り巻く関係や問いを浮かび上がらせる場だったように思います。個と社会、文化と技術、仮想空間と現実空間──そのあわいにある無数の接続が、静かに、しかし確かに可視化されていました。 

WAN運営チームとしても、こうした関係性をひらく実践を支えるための視座を得るリサーチとなりました。

展覧会概要

名称

「DEMO2025」

会期

2025年6月4日〜22日(水〜日/12:00〜19:00)
※会期は終了しました

会場

WSA(180 Maiden Lane, Lower Manhattan)

主催

NEW INC & NEW MUSEUM

内容

展示、トークイベント、ライブ、販売など

入場無料・予約不要

公開日:2025年6月20日

取材・文・写真:大矢享(CG-ARTS 文化事業部)

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