斎藤瑞季氏が、ジェネラリストとしてのフリーランスの経験を経て2012年に設立した株式会社StudioGOONEYS(スタジオグーニーズ)。StudioGOONEYSは、次世代クリエイターの育成に力を入れ、技術と表現力の向上を目指しており、オリジナル作品の開発に注力している。その背景には、「世界に届く日本発のCG作品を生み出したい」という強い理念がある。

今回取り上げるのは、数々の国際映画祭にノミネートされ、日本をはじめ、ポートランド、ロサンゼルス、ニューヨークなど世界9つの映画祭で受賞するという快挙を成し遂げた、オリジナルショートアニメ『BRIDGE -My Little Friends-』である。
本作のメイキングを通じ、斎藤氏は日本のセルルックアニメーションが直面する課題、そしてそれに対するStudioGOONEYS独自の考え方やアプローチについて詳しく解説した。
StudioGOONEYSは、アニメ、ゲーム、映画、CMなど多岐にわたるジャンルの映像制作に携わる3DCGプロダクションとして紹介された後、同スタジオがなぜオリジナル作品の制作にも取り組むのか、その背景や理由が語られた。

斎藤氏がオリジナル作品の制作にこだわる理由は、主に三つある。
欧米におけるCGの発展は、映像制作の過程で自然に生まれ、既存のクリエイターたちがCG技術を学び、活用していった流れにある。一方、日本では、ゲーム分野を起点にCG技術が発展した経緯もあり、CGが他の制作工程と分離され、専門家として支える形になっている傾向があるという。
こうした特性の違いにより、日本ではCGに強い、CG出身の監督が生まれにくい現状が存在する。この状況を打開するためにも、StudioGOONEYSでは、CGを基盤としたアニメーション監督を育成し、世界で戦える人材と、それを支える制作体制の構築に挑戦したいという思いが語られた。
また、オリジナル作品を制作する過程で試行錯誤してきたアニメーション手法についても、本作『BRIDGE -My Little Friends-』のメイキングを通じて詳しく解説された。
今回の作品では、アクション表現よりもアクティング、すなわち演技表現に一層の力を注いだという。アニメーションの基本はディズニーの「12の原則」にあり、この原則はセルルックであれリアルルックであれ変わらないと説明。そのうえで、ネガティブスペースとポジティブスペースを効果的に活用した動きの設計も重要な要素であると語った。

さらに、特に注目すべきポイントとして、アニメーションにおける「情報変化量」に着目していることが紹介された。情報変化量を意図的にコントロールすることで、動きに温かみが生まれ、観る者を惹きつける表現が可能となる。必ずしも正確な絵や自然な動きが、魅力的な画面やキャラクター表現には直結しないという考えを、具体的な実例を交えながら解説した。



確かなアニメーション技術を基盤に、より魅力的な演出を生み出すアクティングを武器として、CG技術とアニメーション表現の融合に挑むStudioGOONEYS。日本発の新たな表現を切り拓く存在として、今後の躍進が期待される。