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『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』インディーズ制作から劇場公開までの道のり(後編)

映像系専門学校の卒業制作としてつくった3分半の短編『ミルキー☆ハイウェイ』で注目を集め、2025年にショートアニメシリーズ『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』放送・配信を経て2026年には劇場版『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』を完成させた亀山陽平監督。CG技術を武器に、カートゥーンや手描きアニメの感性も取り込んだ独自のスタイルは、SF・アニメのファンのみならず、ネットカルチャーに敏感な層にも波及して多くの観客を魅力しています。
ロングインタビューの後編では、デビュー以降の道のりと、生き生きとした会話を生み出す制作フローの秘密を詳しくお聞きします。

SNSの使い方

卒業制作『ミルキー☆ハイウェイ』を ご自身のYouTube で2022年に公開されて、当時再生回数600万回にのぼる話題作となり、ショートアニメシリーズ『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』(以下『ミルキー☆サブウェイ』)につながります。『ミルキー☆ハイウェイ』を広めるために宣伝などで工夫されたことはありますか。

もちろん作品をつくったらSNSなどでどんどん宣伝していくことが、これからの時代で重要ではあるんですけど、それはあまり自分の得意なところではなかったりします。作品の完成の少し前にTwitter(現X)に6秒ぐらいのクリップをアップしたら、それが盛り上がって海外からも注目を集めたので驚いて、あわててYouTubeチャンネルなどを立ち上げました。[1]

亀山陽平監督
お声掛けいただいたものもあったのですが、応募しなかったんです。応募して落ちるとすごい悲しくなるから(笑)。それよりも、YouTubeなどで見てくれた人の反応から学ぶところが多く、刺激を受けました。 ですので、SNSを使ったおすすめのPR戦略とかはないんです。しかし継続して情報を出していくことは効果的と感じています。学生であれば就職活動のときのポートフォリオとしてSNSに自分の作品を整理しておくことも大切です。SNSで良い作品をみた制作会社や配給会社さんから声をかけるケースも多いらしいので。

[1]2026年7月現在で、日本語版904万再生、英語字幕版306万再生。

やっぱり一人でつくる

亀山監督もSNS上での話題ぶりをみた企業からの声掛けで、『ミルキー☆サブウェイ』につながったのでしょうか。

いえ、自分はたまたま卒業後に知りあったシンエイ動画のプロデューサーからの話でした。「何か一緒に新しい作品を作りませんか」と連絡をいただき、『ミルキー☆ハイウェイ』のキャラクターの人気が出ていた実感があったので、おなじ世界で続きをつくろうということに。ハイウェイの次ならサブウェイだろうっていうノリでタイトルは決めました。冷静に考えたら地下は通ってないのでサブウェイじゃないんですけど(笑)。

『ミルキー☆ハイウェイ』は一人でつくった作品でしたが、『ミルキー☆サブウェイ』はシリーズになります。より大きな作品をつくるにあたって制作体制はどうされましたか。

ほぼ一人でつくるのは変わらず、小物が多く必要になるのでそのパーツの制作を協力してもらって4人の体制になりました。Blender はオープンソースなので、そういう共同作法もしやすいです。その体制でつくれるとしたら5分弱の尺になるのかなと、1話3分半程の構成に決めました。
作品クレジットより。ほぼすべてのクレジットが亀山監督

『ミルキー☆サブウェイ』2025年7月からTOKYO MXでのテレビ放送に加え、アニメ公式YouTubeでは11言語にて全世界同時配信されました。全12話をつなげて1本の長編にするプランはいつからあったのですか。

劇場版もつくれるかもしれませんね!という話は2025年の公開前からシンエイ動画のプロデューサーと話していたんですけど、制作の段階では最後に1本にまとめようとは全然考えていなかったです。だから3分半で成立するものとしてつくったものをまとめるのはすごい大変でした。映像と映像のつなぎが、ただ黒にフェードして戻っているのもつまんないし、YouTubeで見れるものをわざわざお金払って見に行くのかという問題もあったので、つなぎの役割を果たす新しい魅力的な要素が必要でした。銀京府警察署の巡査で刑期短縮プログラムを担当するリョーコのパートは劇場版で新しく膨らませた部分です。

『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』予告編

劇場版で掘り下げられたリョーコ

会話へのこだわり

個性豊かなキャラクター同士の自然な会話が大きな魅力になっていますが、どのようにつくっているのでしょうか。

声や会話のニュアンスにこだわりたいし、演者さんの演技に合わせてアニメーションのアイデアを出していく部分があるので、セリフをアニメーションの前に収録するプレスコ[2]を採用しています。特に3Dの場合、声と演技の整合性を取るためには先に声がないと違和感が出やすいんです。

日本のアニメ制作の現場ではアフレコが多いですよね。

おそらく放送のペースが速いためで、タイムパフォーマンスを優先してのことと思います。海外ではプレスコが主流です。国内での例外は高畑勲監督の作品で、いま見ても声の演技が面白い[3]。『ホーホケキョ となりの山田くん』(1999)のナチュラルさとかは強く印象に残っています。

制作の流れで整理すると、まず脚本があって、そこでセリフを中心に練り込むのですね。

そうですね。ストーリーは複雑じゃないので、セリフで面白くなっているかを優先に考えています。セリフを書いたら、自分の声でまず収録して、コンテを上げます。尺とかタイミングの確認と、あと実際に言葉で聞いたら面白いかの判断もつきやすいので自分の声を加工してキャラクターのイメージにおおよそ割り振りながら一通り確認しました。手描きのラフのコンテに自分の声で吹き込まれたものを声優さんに渡して、それをもとに声優さんがプレスコする。その音をもとに作画を詰めていく流れです。

[2]プレスコアリング(prescoring)の略で、アニメや映画などで先にセリフや音楽を録音し、あとに映像をつくること。映像に合わせて声を後から入れる手法は「アフレコ」。
[3]高畑勲監督がプレスコを採用したのは、1988年公開の映画『火垂るの墓』の一部シーンが最初。その後、本格的かつ全面的に導入したのは『おもひでぽろぽろ』(1991)から。

制作中のBlenderの画面

80年代とリアリティ

作品の世界観に、80年代のカルチャーの引用が色濃いですね。ヤンキーや歌謡曲への興味はどこからきたのですか。

時間が経っても魅力が感じられるものは、本質的に良いものだと思うんです。流行りのものって 10年後に残るかわかんないんですけど、 もし10年後も残っていたらそれはどの時代に見ても聞いても魅力を感じられるものだろうと。レトロだから好きというよりは時代を超えてその時代のスタイルが残っているものに惹かれます。

今回の作品のモチーフとして80年代を選ばれたというより、そのまま好きなものが反映されているのですね。

たとえば町を歩いていても、あたらしいビルの合間に、昔に建てられたレトロなビルがパッと目に入ったり、街並みに新旧の要素が混在しているのが当たり前のことだったりします。その感覚は、架空の世界に信憑性を込める意味でも役立つんです。 SF だけど、実はリアリズムがすごい大事だと思っています。それがキャラクターに感情移入しやすくなることにもなるので。

創作の動機を忘れない

これから作品をつくりたいクリエイターへのアドバイスをお願いします。

なんで自分自身がそのクリエイションをやろうと思ったのか、初心は絶対忘れないようにしなくちゃいけないと思っています。日々新しいツールが出るし、新しい話題も出てくるし、働き方とかいろんなものが変わっていくなか、目移りすると思うんですけど、芯のところを持っていたいですね。人の価値観、好き嫌いの根幹は変わらないはずです。そもそもなんでこれをやりたかったんだろうと考えると、きっと「自分はこれやっている瞬間が一番楽しいんだ」という自分の価値観に気付けるはず。その気持ちを大事に続けたいと思います。

前編はこちら

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プロフィール
アニメーション監督
亀山 陽平
KAMEYAMA Yohei
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1996年生まれ。2016年夏からアメリカ合衆国カリフォルニア州に留学、2020年に都内の専門学校に入学。2022年2月、卒業制作として『ミルキー☆ハイウェイ』を制作。フリーランスとして活動をはじめて以降、MV制作や企業タイアップ企画などに参加。2025年全12話のショートアニメシリーズ『銀河特急 ミルキー ☆ サブウェイ』を放送・配信。2026年『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』を公開。

『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』
監督・脚本・キャラクターデザイン・制作:亀山陽平
音響会社:ビットグルーヴプロモーション
主題歌:キャンディーズ「銀河系まで飛んで行け!」
企画制作:シンエイ動画
製作:タイタン工業
配給:バンダイナムコフィルムワークス
https://milkygalacticuniverse.com/movie/

公開日:2026年9月28日

構成:言問(こととい)
撮影:小澤 塁

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