その手があったかと、美大へ
本日は創作活動の原点からお聞きできますでしょうか。『あたしだけをみて』(2016)は武蔵野美術大学在学中の作品です。どうして美術系の大学に進もうと思われたのですか。
アニメーション制作のきっかけはありましたか。
ストップモーションのダークファンタジー作品ですね。
そこからストップモーションでつくることに傾倒していくわけですね。
でも、つくろうにも技術がなかったんです。独学で After Effectsなどのソフトを学んで、ある程度の手応えを感じてから武蔵野美術大学の卒業制作で完成したのが『あたしだけをみて』(2016)です。この初めてのストップモーション作品で、「第22回学生CGコンテスト」 をはじめ、第28回東京学生映画祭などたくさんの賞をいただくことができました。このときの制作が楽しかったので、ストップモーションを続けようと思いました。
『あたしだけをみて』制作の様子
新しい素材に挑戦した『Candy.zip』
東京藝術大学の大学院に進まれて、さらにアニメーションを追求しますね。
じつは学部生のときに一度就職活動をしていたんです。就職相談課に行った時に、映画祭などの賞を取っていた方が就活が有利ですよとアドバイスをいただいたことを受けて、片っ端から映画祭に応募するようになりました。でもなかなか成果が出ない。賞に入るためにはクオリティを上げなきゃ、もっと制作に集中しようと、就活は途中でやめました。
アニメーションを深く学びたいと思って、東京藝術大学の大学院に進みました。とくにストップモーションの技術を磨きたかったので伊藤有壱先生のゼミに入りました。そしてせっかく大学院に入ったならば新しい素材に挑戦しようと、プラバン[1]を使って大学院一年生で制作したのが『Candy.zip』(2017)です。
プラバンによるストップモーションは世界的にもかなり珍しいでしょうね。
半立体アニメーションで、紙ならカットアウトアニメーション[2]と呼ばれる手法、デジタルでいうフラッシュアニメーションに近いものです。
平面的なビジュアルなので、コストも比較的コントロールしやすく、商業的な展開もしやすいのではと思っていたところ、卒業後にWIT STUDIOと初めて仕事をしたのが、同作の技法の流れにある『キャンディーカリエス』のパイロット版(2021年)でした。WIT STUDIOに所属していたアニメーターと一緒につくっていきました。
アートとエンターテインメントを両立させた『マイリトルゴート』
間をあけずに、『マイリトルゴート』(2018)の制作をはじめられますね。今度はどんな挑戦をしようとした作品だったのでしょうか。
『Candy.zip』では新しい素材に挑んだことの達成感こそあったのですが、実験に時間を使いすぎて、肝心の物語に時間を割けなかった反省点がありました。話の設定が複雑になってしまって、大勢の人には共感されづらくなってしまった。
実際『あたしだけをみて』に比べて、『Candy.zip』は映画祭やコンテストに応募をしても、いただける賞の数が少なく、客観的にも結果は明らかでした。見た目よりも中身を磨かなきゃと思い、物語性に注力したのが『マイリトルゴート』です。独りよがりにならないよう、絵コンテを書きながら積極的にいろんな人に確認してもらっていました。
この時期、自分のスタイルはエンターテインメント寄りなのか、アート寄りなのか、どっちなんだろうという悩みを抱えていました。軸足の置き方を考えた結果、出した結論は、自分はエンターテインメントを大切にしたい人間ということでした。最終的には観客の反応を楽しみたいんです。ただ、アートには表現の深さといった魅力があるので、どちらも意識しながら制作しました。
学生CGコンテストでは当時、アート部門とエンターテインメント部門がありましたが、史上初の2部門での最優秀賞でした。まさにどちらの層にもアピールできたということですね。
はい、アートとしても評価をしていただけて嬉しかったです。学生CGコンテスト(現在のNYAA)の影響は大きくて、今話したアートかエンターテインメントかと悩むきっかけになったのも、『Candy.zip』を応募したときに審査員からいただいたコメントがあってのことでした。そのときの宿題を、『マイリトルゴート』で回答できたんじゃないかなと思いました。
進む方向性が見えたことで、次の『PUI PUI モルカー』(2020)につながっていくんですね。
後編は後日公開予定です
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