
左から、登壇者の平川紀道さん、菅野歩美さん、佐藤壮馬さん、司会の莇貴彦(CG-ARTS)
「場所」をテーマに登壇者それぞれの創作活動を紐解く
第10回の学生CGコンテスト最優秀賞受賞、現在は札幌を拠点に世界的に活躍する平川紀道さんは、2024年に東京・表参道で発表した近作《a circular piece (of the spacetime)》を紹介。純粋な高次元幾何形態や自然物といった意味の不定な光や音が、商品や広告に満ちた東京の喧騒の中で目にするもの、耳で聞くものが世界のすべてではないことを知らせ感じさせる作品です。
同じく札幌を拠点にする佐藤壮馬さんは、英国から帰国後に制作した作品《おもかげのうつろひ》を紹介しました。このプロジェクトでは2020年の豪雨により倒木した岐阜県・神明神社の「御神木」を、高解像度3Dスキャン技術を用いてアーカイブしながら、地域社会と協力して日本の「風土」「民族性」といった概念に迫りました。
第29回学生CGコンテストにて「NEW CHITOSE GENIUS賞」を受賞した菅野歩美さんは、このイベントと同時期に「第11回新千歳空港国際アニメーション映画祭」にて受賞作《明日のハロウィン都市》を展示。渋谷のハロウィンを「オルタナティヴ・フォークロア」として再解釈し、都市と自然の記憶を重ねた映像インスタレーションです。

それぞれの「場所との関わり方」
例えば、札幌の雪は、都市に入り込む制御不可能な自然物ですが、それが街の風景や人々の動きを変え、独自の都市体験を生み出します。歩行者は雪壁に進路を遮られ、滑りやすい路面を避けるため車道に出ることも。雪景色や歩きづらさも含めた「札幌らしさ」は、人間にとっての意味に埋め尽くされた近代都市の体験とは違ったものとして観光客や市民の記憶に残るのではないかと平川さん。
佐藤さんは、自身の暮らす札幌市菊水の重層的な歴史や日常の裏にある物語に着目して制作しています。日常の中のふとした「場所に対する違和感」を探り、一見すると無駄にみえる動きから都市の隠れた意味を発見します。また、観る人が自由に解釈を広げられる余白を残すことも大切にしています。
それに対して、菅野さんは現実の歴史や都市データを活用し、バーチャル空間で映像作品を作ります。UnityやBlenderといったツールを用い、ゲームと現実の境界が曖昧な都市を作り上げながらも、映像をもうひとつの都市として一種の「のぞき見」体験を提供します。これは、自身の視点や感覚を意識的に重視しているためです。
創造的な感覚と、客観的なデータをどう意識して作品へと昇華するのか。3人のアーティストが、それぞれの制作プロセスと場所との関係について議論されました。観客席からの質問もあり、作品展示のみならず作品アーカイブやアーティストステートメント、さらにはコンテスト等の活用方法についても意見が交わされました。

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開催概要
日程
2024年11月3日(日)15:00~16:30(開場 14:30)
登壇者
菅野 歩美(アーティスト)
佐藤 壮馬(美術家)
平川 紀道(アーティスト)
主催
公益財団法人 画像情報教育振興協会(CG-ARTS)
共催
札幌文化芸術交流センター SCARTS(札幌市芸術文化財団)、札幌市
協力
新千歳空港国際アニメーション映画祭、札幌市図書・情報館
助成
令和6年度 文化庁 文化芸術創造拠点形成事業
お問い合わせ先
〈内容について〉
Next Young Artist Award(NYAA)事務局
TEL:03-3535-3501 ※対応時間:平日(祝祭日は除く)10:00〜17:00
Email: nyaa@cgarts.or.jp
〈会場について〉
札幌文化芸術交流センター SCARTS
TEL 011-271-1955 ※対応時間:9:00~17:00(休館日を除く)
Email:scarts@sapporo-caf.org
■Next Young Artist Award(NYAA)とは
メディアアート、アニメーション、映像、ゲーム、パフォーマンス、インタラクティブコンテンツ、現代アート作品など、新しいジャンルを開拓するクリエイターの登竜門「学生CGコンテスト」は、30年の節目を迎え「Next Young Artist Award(NYAA)」として生まれ変わりました。