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『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』インディーズ制作から劇場公開までの道のり(前編)

映像系専門学校の卒業制作としてつくった3分半の短編アニメーション『ミルキー☆ハイウェイ』で注目を集め、2025年にショートアニメシリーズ『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』放送・配信を経て2026年には劇場版『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』を完成させた亀山陽平監督。CG技術を武器に、カートゥーンや手描きアニメの感性も取り込んだ独自のスタイルは、SF・アニメのファンのみならず、ネットカルチャーに敏感な層にも波及して多くの観客を魅力しています。作品世界を拡張していく亀山監督に、創作の核心を聞きました。前編ではCGに対する考え方と制作ツールへの思いを語っていただきました。

CGという選択

監督はアメリカに留学されていますね。どのようにCGアニメと出合ったのでしょうか。

アメリカの大学では美術史を専攻していました。ハリウッドはエンターテインメント産業の最先端の地なので、その様子を直接見てみたい気持ちで渡米しました。ですが結果的にアメリカでは映画制作に深く関わることはなく帰国しました。というのも、向こうで映像業界への就職について調べるうちに、大きな予算でたくさんの専門家が関わって作品がつくられていく制作システムを知ることになります。運良く参加できたとしても、ごく一部の小さなパートにしか関われないと思ったんです。とくに留学生で英語も流ちょうに話せなかった自分には、作品の根幹に関わるポジションになるのはあまりに遠い道のりに見えました。

自分の世界をつくりたい、という気持ちとは相いれなかったのですね。帰国後、2020年に映像系専門学校に入られましたね」。ここでは何を学ばれましたか。

昔のカートゥーンが好きで作画アニメーションに興味があったんですけど、ディズニースタジオをはじめ、当時つくられる長編アニメーションはすでにCGに舵を切っていました。これからアニメをつくるのにCGでの制作は避けられないと思い、CGアニメーター専攻を選びました。
ただ、手描きでアニメがつくれない時代になったということはなくて、インディー規模では手描きで制作してSNSで発表している人は最近増えています。そういう意味では選択ミスしたのかなぁ、と(笑)。

いえいえ。 CG というツールを手にしたことによって、一人でも作品をつくれる可能性を発見されたんですね。

そうですね。アメリカでの現場の話を聞いていて、自分には個人規模が合っていると思っていました。それに、やはり手描きアニメーションは1秒をつくるのも16枚とか24枚を描く手間を要する大変な世界なんです。個人でやろうと思った時に CG は正しい選択だったと思います。

アメリカ、日本でそれぞれ学んで、教育スタイルの違いを感じることはありましたか。

学んだ内容が違うにしろ、教育の役割が「基礎の力」であることは共通して感じています。専門学校では3Dの基礎として多面体の制作やライティングなどの基本的なワークモデリングを通して、体系的な基礎知識を学べました。良し悪しの評価だったり、改善していく方法は学校で先生に聞けてよかったです。ツールはそのあとの選択肢なので、基礎を分かっていることがなにより大切だと思います。 いま自分たちは3DCGソフトのBlenderを使って制作していますが、将来的に新しいツールが出てくる可能性もありますし。

自主制作アニメーション『ミルキー☆ハイウェイ』本編

亀山陽平監督

揺らぎと柔らかさ

手描きにも惹かれていたとのことですが、亀山監督の作品の絵はCGにもかかわらず温もりを感じます。

自分で思う「イヤな CG っぽさ」が出ないように心がけています。具体的には、3Dには物と物の境界線がはっきり出すぎる傾向があります。
たとえば人の顔。手描きであれば、口を描くときに口の端だけ線を入れ、口の真ん中には線を入れないことで、唇のような柔らかいもの同士が密に接する雰囲気をつくれます。これはCGでは通常できないのですが、工夫することで境界線がボケるようにしています。
背景も同じ考え方で、いわゆるテクスチャをベイクする[1]やり方をしています。壁にパイプが通っているように見えるけど、そう見える画像を焼き付けている。画像になると、ぼかすなどの描写がしやすくなるんです。しかも映像に描き出すときに軽い。しっかりつくり込むと絵は強くなるかもしれないけれど、若干どこかをごまかしている方が、画面に柔らかさや揺らぎが生まれる。それも自分みたいな小規模制作だから許されるアプローチだと思います。

CGの弱点を補完するお話しでしたが、逆に、CGらしいことが強みになる部分もありますか。

フレームレートですね。最近は3D 作品なのに手描きっぽく見せようと、コマを抜いている作品が、とくに『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)以降に増えていると思うんですけど[2]、個人的にはヌルヌル動くのが3Dの強みと思っています。もちろん2D アニメーションだったらフルアニメーション[3]じゃない方が魅力的に見えることもあるかもしれせん。でも自分は少ないキーフレームでどこまで滑らかな動きを表現できるかを追求した映像をつくっています。それが3D の強みだと思うので。

[1]3DCGソフトで複雑な計算や立体感、色などの情報を1枚の画像ファイルに「焼き付ける」作業のこと。
[2]『スパイダーマン:スパイダーバース』のフレームレート演出は、あえて1秒間に24コマのうち半分を抜く「2コマ打ち(12fps)」などをキャラクターやシーンごとに使い分け、アメコミ特有のカクカクした手描き感を表現している。
[3]1秒間に24枚の異なる絵(コマ)を使い、滑らかな動きを表現する制作手法。

Blender派の理由

制作ツールにされている Blender はどんな特徴があるソフトなのでしょうか。

決定的なのはオープンソースであることです。誰でもアカウントを無料でつくれます。業界のスタンダードは、より高性能なAutodesk社のMaya(マヤ)があります。自分が学生だったころにはできることの差が大きかったのですが、Blenderがバージョンアップしていくにつれて、プロレベルのものがつくれるようになっていると実感しています。いまは大手のCGアニメーション制作会社にも一部採用されはじめていると聞きます。有名なところではスタジオカラーは、Blenderへの移行と導入をいち早く進めています。
もうひとつ大きなのは、アドオンが豊富で利用者同士で助け合っているコミュニティが発達している点です。チュートリアルもいっぱいYoutubeなどに上がっているので勉強しやすいです。

専門学校の卒業制作として『ミルキー☆ハイウェイ』をつくられたのもBlenderだったんですね。

基礎は専門学校で、ツールの使い方はチュートリアルで学びつつ制作しました。それとCGや脚本づくりの参考書も書店で結構買いました。3Dはだいぶニッチな業界なので、大型書店で探したり。学生のときはコロナ禍も重なりあまり人と出歩くこともできなかったので、制作に集中できました。コロナでなかったら遊び回っていましたね。『ミルキー☆ハイウェイ』もできてなかったかも(笑)。

後編は9月28日に公開予定です

3DCGの体系的な基礎知識を学ぶなら
CG-ARTS検定
https://www.cgarts.or.jp/kentei/
実施日 :2026年11月29日(日)
申込期間:2026年9月1日(火)~10月23日(金)

『入門CGデザイン -CG制作の基礎-[第2版]』
https://www.cgarts.or.jp/books_detail/bcc_2/

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『Next Young Artist Award』応募受付中!
https://nya-award.jp/
作品募集期間:2026年7月1日(水)〜 9月30日(水)17:00(日本時間)

プロフィール
アニメーション監督
亀山 陽平
KAMEYAMA Yohei
portrait_260708_CG-ARTS_0278_加工

1996年生まれ。2016年夏からアメリカ合衆国カリフォルニア州に留学、2020年に都内の専門学校に入学。2022年2月、卒業制作として『ミルキー☆ハイウェイ』を制作。フリーランスとして活動をはじめて以降、MV制作や企業タイアップ企画などに参加。2025年全12話のショートアニメシリーズ『銀河特急 ミルキー ☆ サブウェイ』を放送・配信。2026年『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』を公開。

『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』
監督・脚本・キャラクターデザイン・制作:亀山陽平
音響会社:ビットグルーヴプロモーション
主題歌:キャンディーズ「銀河系まで飛んで行け!」
企画制作:シンエイ動画
製作:タイタン工業
配給:バンダイナムコフィルムワークス
https://milkygalacticuniverse.com/movie/

公開日:2026年9月14日

構成:言問(こととい)
撮影:小澤 塁

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