小学校に到着
福井市上文殊小学校は、福井駅から車で20分くらい。
ひろい田んぼのなかにドドンと校舎が建っており、入口にはなんと明治時代から令和までの卒業生の集合写真がびっしり…。長い歴史を感じる自然豊かな小学校です。
この日は、図工室を使って、午前中には3・4年生向け。午後には5・6年生に向けたワークショップを実施しました。このレポートでは3・4年生向けに実施したワークショップの様子をお届けします。
アニメーション作家がやってきた
講師の水江未来さんは、細胞をモチーフとした作品をはじめとして、ノンナラティブ(物語性を省いた)かつ、カラフルで複雑に変容(メタモルフォーゼ)してゆく世界観が特徴的な、日本を代表するアニメーション作家です。
「みんな、アニメーションって好きですか?」
水江さんが問いかけると、子どもたちからは「『ひつじのショーン』が好き!」「おさるのジョージ!」「ミッキーとかマリオ!」など、大好きなアニメのタイトルを言い合って大興奮。なかには「鬼滅の刃の映画観てきたよ!」という声も。みんなアニメーションが大好きなようです。
そんな水江さんから、まずはアニメーションって何かを知ってもらうために、今まで自身が手掛けてきた作品の紹介からスタート。
「おお〜〜〜!目が回る」「これ見たことある気がする!」「すごい!うわ〜気持ち悪い〜」
水江さんの手掛けた仕事をみて、子どもたちの素直な反応があります。
ピクシレーションアニメーションを体験
まずは本日の課題「コマ撮りアニメーション」を体験。三脚に設置したiPadを使って、教室に集まった子どもたちみんなが、少しずつ体を動かして、ひとコマずつ撮影してゆきます。
全員で、前を向いてパシャリ。ちょっとずつ体の角度を変えてパシャリ。一周するまで8回撮影しました。
「さて、いま撮ったものがどんな動きになったか観てみましょう」
ぐるぐるぐるぐる…、と写ったみんなが、まるでコマやドリルみたいに勢いよく回ります。フレームレート(1秒間に何枚表示されるか)を高くすると、スピードアップして子どもたちは大笑いで楽しんでいます。自分自身が実際にはありえない動きのアニメーションになることで、発想が広がるようです。
*ピクシレーションとは、ストップモーション・アニメーションの技法で、実際の人をコマ送りの被写体として使用し、物理法則に従わない動きをするように見せるもの
実際にコマ撮りアニメーションを作ってみよう
ワークショップ後半は、コマ撮りアニメーションを撮れるアプリケーションを使って、それぞれのタブレット端末を使ってコマ撮りアニメーションに挑みます。
子どもたちには、それぞれの自宅から被写体となるモチーフを持ってきました。
粘土、ロープ、木のブロック、ペットボトルのキャップ…
カラフルでユニークな形がたくさん集まりました。
子どもたちはそれぞれ自分の世界に入りこみ、想像した動きをつくります。走ったり、形が変わったり、戦ったり、ジャンプしたり…、モチーフに触りながら、思い思いの動きをアニメーションにしてゆきます。
最後に、完成した子どもたち全員、13作品をループ再生して、みんなが友達の作品を観て、感想を共有してゆきます。もっと続きを作りたい!という子どももいるようです。このワークショップで、コマ撮りのやり方を覚えた子どもたちは、学校や自宅でアニメーションをつくってゆくのではないでしょうか。
子ども時代に体験した創作体験こそが、クリエイターとしての個性につながってゆくものだと常々感じています。このような地道な活動を通じて、とくに都市圏から離れた地方の子ども達に創作の種を蒔いてゆくことが、ひいてはメディア芸術分野を下支えする大事な活動だと感じました。