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検定受験対決!「画像処理エンジニア検定」で動画とAI時代の学びを実践(前編)

本サイトの前身である「CG-ARTS EDUCATION REPORT」から継続する企画「検定受験対決」。現場の第一線で活躍する制作会社の代表や、人材育成に携わる教育機関の講師の方々がCG-ARTS検定を受験。「対決」と題して互いの得点を競うことで、体験にとどまらない真剣勝負に挑みます。
第5回目となる舞台は「2025年前期画像処理エンジニア検定エキスパート」。挑んだのは、検定受験対決ではおなじみ、磯野貴志氏(株式会社リズ代表取締役)に、前回マルチメディア検定 エキスパート優勝者の川村弘司先生(北海道情報専門学校)、第1回目の対決以来2度目の参加となる林圭一氏(有限会社ウニコ代表取締役)、初参加の堂前嘉樹氏(株式会社ロジカルビート代表取締役)と蛭川善文氏(J’s株式会社/D-bas株式会社代表取締役)の5名です。日常業務とは異なる領域である、画像処理の技術系の専門領域を対象とした画像処理エンジニア検定に挑んでいただきました。
前編では、今回の対決への参加にいたる経緯や手応えなどを伺ったあと、気になる受験結果を発表!動画やAIを用いた新たな勉強法についてもお話いただきました。

検定受験対決にいたるまで

2013年にはじまった検定受験対決も今回で5回目です。

磯野貴志(以下、磯野)
僕、実はこの検定受験対決シリーズの発起人で、これまでの対決、全部出場しています。でも第1回目で林さんに、第4回目では川村先生に負けてと、一度もトップを取れていません(笑)。今回、第5回目で対決メンバーの新たなターゲットにしたのが堂前社長です。多分負けていますが(笑)。僕は唯一、5種類のエキスパート検定を受けた男です。しかも全制覇目前。なので、検定に関してはうるさいですよ。
堂前嘉樹(以下、堂前)
僕は2006年に、今で言うところの「CGエンジニア検定 エキスパート」相当を一度受けたことがあります。なので受験は実質2度目です。久しぶりの勉強でちょっと緊張しました。
蛭川善文(以下、蛭川)
今回が初挑戦です。僕は高校卒業後すぐ土建屋で働いて、試験や受験には縁がありませんでした。今回、教科書は2回しか読めず、座学が苦手だということがわかりました(笑)。
川村弘司(以下、川村)
500ページほどもある本を2回読んだのはすごいですよ。
蛭川
でも全然覚えられませんでした。読んで面白いというものでもないですし……。
検定に対応したテキストブック、問題集。画像処理エンジニア検定エキスパート公式問題集 [第五版](左)、ディジタル画像処理 [改訂第二版](右)

川村先生は前回の優勝者です。

川村
前回受けた「マルチメディア検定 エキスパート」は、僕が普段授業で教えている内容が主でしたからね。今回は全く触れたことのない分野で、泣きそうになりながら勉強しましたよ。
磯野
川村先生が苦しむ姿を見たかったです(笑)。ちなみに前回は僕も含め、参加した4名全員受かりましたね[1]。点数で僕は負けましたが。
川村
第4回が終わってから、会うたびに「つぎは違う種別で勝負しよう」と絡まれ続けてきました(笑)。唯一受けたことがない「画像処理エンジニア検定 エキスパート」に挑戦しないかと言われて、断り続けていたのですが、そうしたらついに、CG-ARTSの篠原さんと磯野さんから挑戦状みたいなムービーが送られてきて。「ああもう、じゃあ勝負してやるよ!」と、動画で返しました。
堂前
僕は以前からなんとなくこの企画の存在は知っていて、興味はあったのですが、自分からやりたいと言うのも違うかなと思っていたのです。そうしたら、リクルートイベントで北海道に行っていたときにお声かけいただいて。僕の参加表明も動画にとられていましたね。
林圭一(以下、林)
動画で参加表明の言質をとるのが恒例になっているのですね。

[1] 合格ラインは基本的に7割だが、問題の難易度や得点の平均値によって変動する場合もある

参加表明の動画
今回の挑戦者たち。磯野貴志氏、川村弘司先生、林圭一氏、堂前嘉樹氏、蛭川善文氏

受験の手応えと当日の時間配分

結果発表の前に一言ずつ、自己採点など、手応えをお聞かせいただけますか。

川村
僕は7割は超えてると思います。
一同
すごい!
磯野
僕は自己採点で63.4%です。合格には一歩足りずですね。
堂前
感触としては75%くらいだったのですが、自己採点は67%でした。
僕は採点していないのですが、ちょうど半分ぐらいなんじゃないかなと思っています。
蛭川
僕は100点満点中30点くらいなんじゃないでしょうか。
磯野
みなさん、時間は足りましたか?
川村
ギリギリでした。僕は大抵、試験問題は一通り解いてからもう一周見直して確認するんですが、今回は一通り解いただけでもうタイムアップ。
磯野
僕もほぼ一緒。検定を全種類受けて、こんなに時間が足りないのは初めてでした。採点してみたら、わかっていたのに間違えたという凡ミスがいくつかあって。もう少し時間が欲しかったですね。
堂前
僕は試験では、とにかく早く会場を出て楽になりたい(笑)。終了時間まではいないと決めているんです。今回も終了15分前くらいには退室しました。
同じです。あやふやな記憶で挑んでいるので、見れば見るほど迷ってしまうだけ。見ても仕方がないなと、まるで全部できた人のように早めに退室しました。蛭川さんもめちゃくちゃ早かったですよね(笑)。

結果発表

では、いよいよ今回の結果発表です。(採点結果を配布)1位は川村先生、75.5点。2位が堂前さん65.5点、3位が磯野さん、61点。そして林さん50.5点。蛭川さんは30点でした。みなさんほぼ自己採点通りですね。

(通常の試験では点数の公開は行なっておりませんが、この取材では読者にわかりやすいよう点数を公開しています)
磯野
川村先生、さすが。
一同
すごい。
川村
勘がさえましたね。自信がなかったところが6問くらいあったのですが、それが全部合っていました。
結果発表。採点結果が配られます
連続優勝を決め、自信の笑みを浮かべる川村先生

難しかった点①エピポーラ線

難しかった問題、たとえば?

堂前
川村先生は全問正解されていますが、僕、第9問設問aの「エピポーラ線」はずっとわからないまま、ほったらかしにしていました。
川村
僕もあやうかったですよ。平行ステレオのエピポーラ線は理解していましたが、この問題の場合、少し位置がずれていて、その場合にどういった「エピポーラ線」が出るのか、想像がつきませんでした。
堂前

練習問題でも全然ピンと来ていなくて、「まあ、試験には出ないだろう」とたかをくくっていました。出ましたね(笑)。
「エピポーラ線」は、体感的に理解するために、勉強中にゲームエンジンで構造を組んだりもしてみたのですが、うまくいかなかったのです。

2025年度前期 画像処理エンジニア検定エキスパート 第9問(a) 正解答:カ

学習方法は変化する 動画教材とAI

川村
実は僕、今回の勉強は教科書から入っていません。さまざまな科目の動画教材をオンラインで提供しているサービスがあるのですが、そこに画像処理エンジニア向けの教材があったので、まずはそれを30時間、夜な夜なスマホで全部視聴しました。その後に教科書を読んだら頭に入りやすかったですし、動画の段階ではあまり理解できていなかったことも後から理解できました。「エピポーラ線」もその順番で理解しましたね。
磯野
正直なところ、僕も途中からYouTubeなどを頼りました。
川村
映像や画像についての教材が、動いて見えない、文字しか書いていないというのは辛いですよね。焦点距離の話なども図だけだと理解しにくい。CG-ARTSも動画教材を出されるといいのではないでしょうか。
向かって左から川村氏、磯野氏、堂前氏
磯野

過去に受けた検定では、問題集を解いて、わからないところは教科書に戻ってを繰り返せば、3週間程度で全体を把握できたのですが、今回は蛭川さんがおっしゃったように、教科書を2回読んでもわからない部分がありました。「まずい」と思い途中から使い始めたのが、AIです。最後の1週間はMicrosoftのCopilotにわからないことを聞きまくりました。Copilotはサクサクと回答してくれたので、かなり成果が出ましたね。
教科書の解説文には、知らない単語がたくさん出てくるのですが、AIになら「これって何のこと?」と恥も外聞もなく聞けます。解説して、必要に応じて図にもしてくれて。大いに学習の手助けになりました。

堂前
僕はGoogleのGeminiを使ってみたのですが、過去問を例に解説してもらったら、実際と違う答えを言ってきたのです。正そうとしても「いや、そんなはずはありません」と(笑)。AIを諭すようなやりとりになってしまい、結局使うのをやめました。
磯野
そういった場合、Copilotは「問題の意図が◯◯ではなく△△である可能性がありますね。△△だとするとこうなります。詳しく解説しますか?」と、柔軟に対応してくれましたよ。
蛭川
僕はNotebookLMというAIに作問してもらおうと試みたのですが、そもそも難しくて、自分がわからず。やはり川村先生がおっしゃったように動画教材をベースにするといいと思いました。普段から扱っている領域に関することはわかるのですが、それ以外は僕にとっては、野球のルールを知らないまま野球をプレーしているような感覚でした。
左から林氏、蛭川氏

動画もAIも万能ではない

川村
AIは学習内容との相性が問われそうですね。ただ、動画教材も万能ではありません。つくりによって対策できる部分とできない部分があると感じました。たとえばのフィルタの設問に関して、その特徴から何のフィルタなのかを解答するという問題があった場合、僕が使った動画教材ではその対策は難しい。というのは、動画教材ではより実践的に「○○のようなシチュエーションや用途には、△△というフィルタがよく使われます」という解説があるだけでした。フィルタどうしを比較して各々にどういった特徴があるのか、ということを知る手助けにはなりにくいのです。
磯野
AIも答えを間違えることがありました。どうしてもわからなかった問題は、この5名とCG-ARTSがいるメッセンジャーのグループで質問したりしました。

難しかった点②フーリエ変換

川村
教科書の中には「フーリエ変換」が頻出しますが、最後の最後までよくわからないままでした。数学力がなさすぎて……。
磯野

フーリエ変換、昔ちょっとかじったことがあって。今回、この機会にちゃんと理解しようと思ったのですが、この検定の教科書に限らず、さまざまな解説に載っている図が不十分だと感じます。フーリエ逆変換で元画像に戻すといったときに、必ずといっていいほど、周波数特性と振幅スペクトル画像しか載っていない。振幅スペクトルと位相スペクトルの情報があってフーリエ逆変換で画像を戻せるのですが、どこでどう勉強しても、位相スペクトルの用語は出てきても画像が出てこず、なぜ元に戻せるのか、僕はずっと理解できなかったです。
堂前さんに聞きたいと思っていたのですが、聞けるタイミングもなく。

堂前
僕もフーリエ変換の問題、間違えていますね。正直なところ、フーリエスペクトル系は実務ではとくに使わないので……なんとなく、体感的に判断しています(笑)。練習問題ではそれで8割方解けていたので、あまり深追いしないようにしていました。

磯野

フーリエ変換の位相スペクトルの画像を出してくれたのもCopilotです。「何それ」とCopilotに聞いたら、「これは画像の位置関係を表していて、これ抜きではとんでもない絵が出てきてしまう」と。どんな絵が出てくるかも出してくれましたよ。ようやくフーリエ変換を完璧に理解できたと思いました。
ただ、結局試験では凡ミスをして間違えてしまったのですが(笑)。悔しいです。

後編はこちら
プロフィール
株式会社リズ
磯野 貴志
ISONO Takashi
磯野さん写真

武蔵野美術大学・視覚伝達デザイン学科卒。在学中からセガにアルバイトとして入社し、3Dゲームの礎を築いた伝説的クリエーター集団『AM2研』の一員として徐々にその頭角を現す。『バーチャファイター2』のデザイナーを経た後、若手ながらセガサターン版『バーチャコップ』のディレクターに大抜擢される。1998年に株式会社リズを設立。以降は経営の傍ら教育にも力を入れ、専門学校で特別講演などを行っている。

北海道情報専門学校
川村 弘司
KAWAMURA Hiroshi
川村先生写真

東京でシステムエンジニアとしてWEB関連の開発に従事した後、大学広報室での勤務を経て北海道情報専門学校へ。現在は教務部の副部長として、主にクリエイター育成の場づくりに注力している。担任としてクラス運営に従事する傍ら、カリキュラム検討、学内イベントの企画立案、学生の進路指導、業界との連携など幅広い業務に携わる。学生の夢の実現を支援する姿勢に定評があり。特技はバーベキュー。

株式会社ロジカルビート
堂前 嘉樹
DOMAE Yoshiki
堂前さん写真

会社員時代は、コナミコンピュータエンタテイメント神戸(現コナミデジタルエンタテインメント)、バンダイナムコゲームス(現バンダイナムコスタジオ)等にプログラマーとして所属。その後、フリーランスを経て、株式会社ロジカルビートを設立。社長業をこなしつつプログラミング&テクニカルアーティスト業務も行う。著書に『ゲームを動かす技術と発想 R』『ゲームを動かす数学・物理 R』がある。外部講演も多数。

有限会社ウニコ
林 圭一
HAYASHI Keiichi
林_Q5A4146

1998年株式会社リズに新人第一号のデザイナーとして入社。ゲーム開発におけるデザイン業務は一通り経験。2004年フリーランスとして独立後、2006年有限会社ウニコ設立。アートディレクターやディレクター、プロデューサーとして数多くのタイトルを制作。最近では、ゲーム開発者のための働きやすい環境づくりや教育支援、さらには次世代の開発者育成に力を注ぐ。猫とバルセロナが好き。

J’s株式会社、D-bas株式会社
蛭川 善文
HIRUKAWA Yoshifumi
蛭川さん写真

建築業界からゲーム業界へ転身しデザイナーの経験を経て2017年にJ’sを設立。ゲーム・VR・メタバースなど幅広い分野で事業を展開「好きなことをして生きていく!」を理念に活動。映像・CG・バーチャルタレントなどの制作を通じ提案力と技術力を活かした環境づくりに尽力。エンタメの力で人々に笑顔を届けたい!

CG-ARTS検定について
後期実施日 :2025年11月30日(日)
後期申込期間:2025年9月1日(月)〜10月24日(金)
実施検定  :マルチメディア検定/CGクリエイター検定/Webデザイナー検定/CGエンジニア検定/画像処理エンジニア検定
ベーシック受験料 :5,600円(税込)
エキスパート受験料:6,700円(税込)
※全てマークシート形式

公開日:2025年9月22日

インタビュー・構成:言問
撮影:畠中 彩

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